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オーバーホール・レトロフィットとは?

オーバーホール・レトロフィットとは?

― 工作機械を“延命”し、いまの現場に“最適化”するもう一つの選択肢 ―

「この機械、そろそろ買い替えかな?」――製造現場ではよくある悩みです。
本記事が扱うオーバーホール/レトロフィットは工作機械の話です。
フレーム・主軸・送り系・制御系など、機械固有の精度と再現性をどう回復・進化させるかを
初心者にも分かりやすく解説します。

1.まずはここだけ:OH/RFの違い

オーバーホール(OH)
長年の使用で劣化・摩耗した工作機械を分解・洗浄・調整・部品交換して、初期性能に近い状態へ復元することを指します。
例:主軸ベアリング交換、ボールねじ・リニア案内の点検/交換、バックラッシ(がた)調整、摺動面摺合わせ、油漏れ修繕、幾何精度の再出し など

レトロフィット(RF)
既設の工作機械に新しい制御・機能・安全対策を後付けし、現在の生産要件に適合させることを指します。
例:旧式リレー回路からPLC化、操作盤のタッチパネル化、NC/対話プログラム化、セーフティ回路・カバー追加、段取り自動化 など

イメージとしては、
OH=元の性能へ「戻す」/RF=現場ニーズに「合わせて進化させる」
多くの現場ではこの二つを組み合わせ、「戻す+進化」を同時に実現しています。

2.工作機械のよくある劣化ポイント

工作機械は精密な部品が高負荷で長期間動作するため、摩耗や劣化が避けられません。
以下はオーバーホールやレトロフィットを検討する際に見られる代表的な症状です。

機械本体関連
・ベッド(すべり面・リニアガイド):摩耗による直線・真円度の狂い。潤滑不良や切粉侵入による傷や焼き付き。
・主軸(スピンドル):ベアリング摩耗による回転精度の低下、異音や発熱。テーパ面の錆や摩耗による工具把持力低下。
・送り軸(ボールねじ・リニアガイド):バックラッシュ増加やガイドレールの傷による位置決め精度の低下。
・潤滑系統:オイル詰まりや漏れによる摩耗促進、グリース硬化による滑走不良。

電気・制御関連
・制御装置(NC装置):基盤のコンデンサ劣化による誤作動や起動不良、バッテリー消耗によるパラメータ消失。
・サーボモーター・エンコーダ:モーター軸受の摩耗や異音、エンコーダの信号精度低下による位置ズレ。
・配線・コネクタ:接触不良や断線による動作不安定、突発停止。

周辺機構
・クーラント系統:ポンプ摩耗や吐出量低下、配管詰まりや錆の発生。
・油圧・空圧機器:シール劣化による漏れ、バルブ摩耗による作動不良。
・冷却装置:ファン回転低下や冷媒性能の劣化による熱変位増加。

精度・据付関連
・治具固定部:クランプ力低下によるワークのずれ。
・基礎部:振動やアンカーボルト緩みによる加工精度の乱れ。




3. 新規買い替えとどう違う?



観点 新品導入 オーバーホール/レトロフィット
初期費用 数百万円~数千万円 新品価格の40%~70%程度
納期 数か月~1年 約5~7か月で再稼働可能
操作・教育 操作体系が一新(教育が必要) 現行操作を維持しやすい
治具・ライン 再設計が必要になる場合あり 既存ラインを活かしやすい
リスク 高性能だが立上げ負荷が大きい 最小限の変更で安定回帰

現場が本当に求めるのは「最新化」ではなく「安定した稼働の継続」です。
オーバーホール/レトロフィットの価値は、「現場を壊さないこと」にあります。

4.オーバーホールかレトロフィット、どちらを選ぶ?

・機械の骨格(フレーム)が健全で、精度低下の主因が摩耗や汚れである場合 → オーバーホール中心
・あと数年稼働できれば十分、投資を抑えたい場合 → オーバーホール優先で延命
・制御が旧式で部品調達が難しい、または安全性や段取り改善を図りたい場合 → レトロフィット併用
・同型機が複数台あり、操作統一が重要な場合 → レトロフィットで操作体系を揃える(教育コストを削減)

迷ったときは、「何を直すか」「何を残すか」を先に明確にすることが最も重要です。




5. 現場がすぐ使えるセルフ診断10項目

1.加工寸法のばらつきが増えた(朝と夕で変わる)
2.面粗さが悪化/ビビり跡が出る
3.原点復帰や割出が不安定/位置ズレを感じる
4.主軸の異音・異常発熱がある
5.クランプが遅い/保持力が弱い
6.油漏れや空圧漏れ・にじみが増えた
7.駆動中に異常アラームが出やすくなった
8.旧式の制御機器(リレー・廃番PLCなど)が残っている
9.安全カバーや非常停止の効きに不安がある
10.段取り時間が年々延びている

3つ以上当てはまるなら:オーバーホール/レトロフィットの検討をおすすめします。
5つ以上:計画停止を伴う点検をおすすめします。

6.導入までの流れを簡単に解説

1.現状ヒアリング:困っている現象や条件を一緒にを整理する。(いつ/どの品目/どの条件)
2.現地点検または搬入診断:主軸、送り、幾何、油・空圧、制御を分解レベルで評価。
3.対処方針の切り分け:オーバーホール項目、レトロフィット項目、据付・環境項目に分類。
4.見積・工程設計:停止期間、段取り復帰計画、検査項目を明文化。
5.実施工:分解→清掃→交換→組立→精度出し。
6.試運転・最終検査:試加工で精度と再現性を確認し、現場へ再据付。

重要なのは、精度の数値と再現性を「作業標準」に落とし込むことです。
ここまでやると、戻してからの安定度が違います。

7.ここまで読んで分かること

オーバーホールは精度の回復、レトロフィットは使い勝手と保全性の現在化。
・工作機械は主軸・送り・案内・油空圧・制御の総合体であり、弱点に応じた処置が必要。
・新品導入が常に最適解とは限らない。
オーバーホール/レトロフィットは、現場を壊さず稼働を守る実践的な方法

8.三和精機のオーバーホール・レトロフィット

三和精機では、歯車加工機・各種研削盤・専用機を中心に、
これまでに1,360台超(2024年時点)のオーバーホール/レトロフィットに対応してきました。

長年にわたり培った技術力は社内でも継承されており
製造部の技術者は「現代の名工」にも選出されています。

分解から設計、電装、調整まで一貫対応が可能であり
「直す・残す・進化させる」の配分を現場基準で設計します。

具体的な実績や事例については下記をご覧ください。

三和精機 オーバーホール・レトロフィットページ




9.まとめ

オーバーホール/レトロフィットは、「最新化のためのDX」ではなく
現場を止めないための現実的な選択肢です。
新品導入だけが答えではありません。

「戻す」と「進化させる」を組み合わせることで
工作機械を再び現役として活かすことができます。